会津漆器について

会津漆器について

『良く安く』の精神と
ひたむきな技術革新

1400年代、戦国大名の蒲生氏郷が会津に漆器の製造技術を持ち込み、
会津藩祖の保科氏が産業体制を整えたことによって会津漆器は瞬く間に全国へと広がり、
名をはせました。ひたむきな技術革新によって生み出された値ごろで丈夫、
使い勝手の良い品々は、日本の毎日の食卓だけでなくハレの日の儀式にも
欠かせないものとなったのです。

会津人の
もの
づくり

会津人のものづくり

深い山々に囲まれる会津地域は、冬になると雪に閉ざされ外界との交流が困難となります。夏には、冬にむけて食べものの備蓄をし、酒や漬物などの発酵文化が盛んとなりました。
冬の間は、農作業道具や家の手入れに精を出しました。そのため、会津の人々は手先が器用と言われています。東北人特有の我慢強さも手伝って、華やかではないものの、使う人の心に寄り添った丈夫で長持ちする物を丹精込めて作る、ものづくりの心が育まれたのです。

一大産地
としての
隆盛と復興

一大産地としての隆盛と復興

江戸時代、会津漆器は全国へと一気に広まり大衆に漆器文化を根付かせました。貴族のものであった漆器が一般の人々の食事に使われるようになったのです。その後戊辰戦争によって一時漆器の生産は困難となりましたが、戦火で荒れ果てた会津の復興のために大店の商人たちが職人を呼び戻し生産力が回復。鈴木式ろくろやゴム印蒔絵などの大量生産のための独自技術を開発、完全分業制による生産システムを構築したことによって海外に販路を開拓し再び一大産地としての隆盛を取り戻しました。その後、焼金蒔絵が開発され、庶民の日用雑器から高級漆器へと生産が拡大されました。

芸術家
ではなく
職人として
の誇り

芸術家ではなく職人としての誇り

会津漆器は、昔から使う人のニーズを研究した上で成り立ってきました。手に馴染み軽く丈夫であることを基本にして、手頃で良いものをより多くの人に提供することに心を砕きました。制作の工程とそれに関わる人員を細かく分け、完全分業制にしたことで堅牢な器を合理的に大量生産する体制を構築。これは当時の漆業界にとって大変画期的なことでした。その中で培われたのは、芸術家ではなく職人であることの誇り。人の生活に本当に必要とされるもの、つまり毎日使いたくなるものや持っているだけで心を豊かにする品々を生み出し続けました。

会津漆器の
制作工程

会津漆器の制作工程1 会津漆器の制作工程2 会津漆器の制作工程3

段階的協業と呼ばれる製造工程が特徴的です。木地、塗り、加飾の三部門からなり、それぞれの工程は材料や技法が異なるため全てを一人で行うことができません。そのため三種の専門家を作り、職業が分けられたのです。その全工程を管理する必要性から管理、販売を担う第四の職業として問屋が生まれました。商品開発から管理、販売を担った会津の漆器問屋。会津は強い問屋性家内工業が特徴であり、生産者が問屋を兼営していた輪島とは異なる生産システムでした。

会津漆器の職人

  • 木地師(丸物師・惣和師)

    木地師(丸物師・惣和師)

    漆器づくりは、形づくりから始まります。椀などの丸いものを「丸物」と呼び、ろくろや手斧、のみを使って丸太から削り出します。一方で重箱や御膳などの四角のものは「板物」と呼び、手のこやかんなを使って板を加工し、曲げたり組み立てたりして成形します。丸物と板物の制作工程は全く異なるため、それぞれが専門職と進化しました。丸物を作る人を「丸物師」、板物を作る人を「板物師」、会津ならではの呼び方で「惣和師」とも言います。手挽きろくろを用いていた中、明治29年に動力で稼働する画期的な「鈴木式ろくろ」が発明されたことで丸物における作業効率が劇的に向上しました。

  • 塗り師

    塗り師

    成形された木地に塗りを施し、器として滑らかな手触りを作り出し、さらに堅固に整えるのが塗り師の仕事です。漆は成分中のウルシオールが水分と結びつき化学変化を起こすことで固まります。漆を精製加工し、下地から仕上げまで何度も丁寧に塗り重ねることで独特の温かな風合いを生み出します。漆の特性を理解した上で、ほこりやちりがつかないよう緻密に湿度を管理しながら行うデリケートな作業が多いため、作業中の部屋は隔離状態となり、家族であってもなかなか入ることの許されない場所です。

  • 加飾師(蒔絵師)

    加飾師(蒔絵師)

    塗り物に模様を施す加飾のことを一般に蒔絵といい、海外でもそのまま「MAKIE」と呼ばれ世界的に評価される日本独特の装飾技法です。彩り豊かな漆絵の具で塗物に直接筆を入れる「漆絵」や、金銀きらびやかな「蒔絵」「沈金彫」、青い光を放つ貝殻を貼り付ける「螺鈿」など、蒔絵は漆器の成長とともに「手わざ」から日本固有の「芸術」として成熟しました。精緻な筆づかい、色の組み合わせ、図案を開発する画力、曲面に描く技術など、あらゆる緻密な技術を持ってはじめて一流といばれる蒔絵師となります。

  • 漆器問屋

    漆器問屋

    木地・塗り・加飾の職人と協力し、漆器の商品開発から生産管理、営業、販売まで行う漆器販売のプロデューサー的役割。昔は特に細かな分業制が敷かれていた会津漆器界において、どんな商品を作り、どこに売るかを決め、生産者に発注し商品を引き渡すまでを一元管理していました。職人とやりとりし、商品の発注や進捗管理、箱入れ梱包・包装、倉庫の整理や在庫管理、販売・発送、商品管理、仕入れ管理、営業・企画開発を行います。